モトローラ・モビリティ・ジャパンが2024年9月27日に縦型の折りたたみ式スマートフォン「motorola razr 50」を発売する。3.6インチのサブディスプレイを備えることで、閉じた状態でも操作できることが特徴だ。同年7月31日に発売されたサムスン電子製の「Galaxy Z Flip6」も同様に、縦型の折りたたみ式スマートフォンだ。両社ともに早くからフォルダブルスマホを手掛けており、最新モデルは使い勝手が向上していることもアピールしている。ライバルとも言える両モデルを徹底的に使って比較した。
左が「Galaxy Z Flip6」でサムスン公式サイト直販価格159,700円~(以下いずれも税込)、2024年7月31日発売。右が「motorola razr 50」で、モトローラ公式サイトの直販価格135,801円~、2024年9月27日発売
- 基本スペックを比較 ハイエンドとミドルの違いで価格差は約4万円
- サブスプレイを比較 「motorola razr 50」はほとんどのアプリが動作する
- メインディスプレイを比較 0.2インチの違いは画質よりもボディサイズ(持ちやすさ)に影響
- AI機能を比較 「Galaxy Z Flip6」がリード
- カメラを比較 類似したハードウェア性能で画質も満足できる
- 処理性能を比較 ベンチマークテストは「Galaxy Z Flip6」が、電池持ちは「motorola razr 50」がそれぞれ有利
- 携帯性や生成AIなら「Galaxy Z Flip6」、サブディスプレイの機能性なら「motorola razr 50」
基本スペックを比較
ハイエンド「Galaxy Z Flip6」とミドル「motorola razr 50」の価格差は約4万円
まず、両モデルの主なスペックを比較しよう。
両機には基本性能に差がある。「Galaxy Z Flip6」はSoCに「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」を採用。これはクアルコムの最新世代に属するハイエンド向けチップで、さらにGalaxyに最適化されたものだ。現時点では、最高峰の性能を有するチップと言っても差し支えないだろう。
いっぽう、「motorola razr 50」は「MediaTek Dimensity 7300X」を搭載。メディアテックのミッドレンジ向けチップだ。そのため、ストレージ容量の同じ512GBモデルで比較した場合、価格には41,900円もの差がある。あくまでもクラスの異なる機種の比較として読んでいただきたい。
なお、「Galaxy Z Flip6」はキャリアではドコモとauが取り扱っている。「motorola razr 50」はソフトバンクが「motorola razr 50s」という製品名で発売している。
サブスプレイを比較
「motorola razr 50」はほとんどのアプリが動作する
閉じたままで情報を見たり、操作したりできるサブディスプレイは、「Galaxy Z Flip6」が約3.4インチ、「motorola razr 50」が約3.6インチ。「Galaxy Z Flip6」はカメラ部を避けるように搭載されているが、「motorola razr 50」はディスプレイの上にカメラが搭載されている。
左が「Galaxy Z Flip6」、右が「motorola razr 50」。サブディスプレイの形状が違う
「motorola razr 50」の画面は、表示するコンテンツの一部がカメラで隠れることがある。ホーム画面や初期設定されているウィジェットは全画面で表示されるが、アプリを使う場合、カメラ部を避けて横長に表示される。この場合、表示領域は「Galaxy Z Flip6」よりも若干狭くなる。ただし、全画面表示に切り替えて、表示領域を広げることができる。
「motorola razr 50」で「マップ」を起動すると、左側の写真のような表示になる。右側の写真は全画面表示に切り替えたもので、表示領域が広がる
左が「motorola razr 50」、右が「Galaxy Z Flip6」。全画面表示にすると、縦方向の画素数が多い「motorola razr 50」のほうが表示される情報量が増える
閉じたままでできることも少し異なる。「Galaxy Z Flip6」はサブディスプレイで利用できる多彩なウィジェットを用意しているが、使えるアプリは限定的だ。
いっぽう、「motorola razr 50」は、ほとんどのアプリを使うことが可能。「Galaxy Z Flip6」は「アプリを使うときは開いて大画面で起動しよう」、「motorola razr 50」は「アプリを使いたいときは閉じたままで素早く起動し、広い画面で利用したい場合は開こう」といったコンセプトで設計されているようだ。
「Galaxy Z Flip6」は外側ディスプレイに最適化されたウィジェットを利用できる。なお、配置するウィジェットやアプリは設定画面で指定する
外部ディスプレイで「マップ」を見ている状態から開くと、内側ディスプレイでの表示にシームレスに切り替わる。これは両モデルに共通する仕様だ(写真は「motorola razr 50」)
メインディスプレイを比較
0.2インチの違いは画質よりもボディサイズ(持ちやすさ)に影響
開いて使うメインディスプレイは、「Galaxy Z Flip6」が約6.7インチ、「motorola razr 50」が約6.9インチ。どちらも一般的なスマホよりも縦に長く、表示される情報量が増えることが利点。横向きにするとワイドなスクリーンで動画を楽しむことができる。画面サイズは「motorola razr 50」がわずかに大きいが、見栄えや視認性に大した差はない。リフレッシュレートは、どちらも120Hzだ。
左が「Galaxy Z Flip6」、右の「motorola razr 50」のほうがひと回り広い
上が「Galaxy Z Flip6」、下が「motorola razr 50」。どちらもワイドな画面に写真や動画を表示できる。画面の明るさを最大にした場合、「Galaxy Z Flip6」のほうが明るく表示された
ディスプレイのサイズは横幅にも影響を与えており、意外と無視できない。「Galaxy Z Flip6」の横幅は約71.9mmに抑えられていて、片手持ちでの操作が比較的容易だ。いっぽう、「motorola razr 50」の横幅は約2mm大きい約73.99mm、持て余すほど大きくはないが、成人男性の筆者が使い比べると片手での文字入力はしづらく感じた。片手での操作性を重視するなら「Galaxy Z Flip6」、画面の大きさを重視するなら「motorola razr 50」を選ぶとよいだろう。
左が「Galaxy Z Flip6」、右が「motorola razr 50」。あいにく開いた状態での写真は撮っていないのだが、横幅が小さいため「Galaxy Z Flip6」のほうが片手でのキーボード操作がしやすく感じられた
半分まで開いたハーフオープンの状態での使い勝手にも差がある。「Galaxy Z Flip6」は、その状態を「フレックスモード」と呼び、アプリによっては画面表示が最適化される。たとえば「YouTube」を視聴する際は、上部に動画、下部に操作パネルが表示される。「フレックスモード」に対応していないアプリでも、下部に操作パネルを表示する設定に切り替えが可能だ。
「Galaxy Z Flip6」の「フレックスモード」でYouTubeを再生した状態。画面の下半分で再生・一時停止などの操作が行える
「motorola razr 50」は、途中まで開いて、内側ディスプレイを使う場合を「ラップトップスタイル」と呼ぶ。「YouTube」「カメラ」など、一部のアプリが最適化された表示になる。
「デスクトップスタイル」の一例。カメラを起動すると、上半分にプレビュー、下半分に操作パネルが表示される
AI機能を比較
「Galaxy Z Flip6」がリード
両モデルは注目の「AI」を取り入れている。そこでAIを用いた機能を使い比べてみた。
「Galaxy Z Flip6」には、サムスンが2024年から最も力を入れている「Galaxy AI」の最新機能がもれなく搭載されている。たとえば、外国語の音声通話をリアルタイムで通訳したうえで画面にテキストを表示できる。また、SNSなどのメッセージやコメントの代筆もしてくれる。このほか、落書き程度の絵を描くだけで、プロが描いた作品のように変換できる機能も備えている。
「Galaxy Z Flip6」では、多彩なAI機能を利用できる。音声中にリアルタイムの通訳を利用できる「通話アシスト」。操作もとても簡単だ
「Galaxy Z Flip6」の「チャットアシスト」はメール、メッセージ、SNSなどで利用可能。文章のタイプとスタイルを設定して生成できる(左側2個の画像)。さまざまなスタイルの絵が素早く生成される「スケッチアシスト」。写真のうえに指定した物を追加することも可能(右側2個の画像)
モトローラは独自開発のAIを「moto ai」と称している。「motorola razr 50」では主に動画撮影時に利用でき、被写体が中央にくるように補正される「アダプト型手ぶれ補正」、カメラを激しく動かしても、最初に設定した水平が保持される「水平ロック」を利用可能。どちらも手ブレ補正を設定するアイコンをタップして簡単に起動でき、効果を実感しやすい機能だった。さらに、自分が着ている服などを撮影して、それに合うオリジナル壁紙を作成できる機能も搭載している。
「moto ai」は動画撮影時に役立つ2つの機能を搭載(左側2個の画像)、AIによって被写体の動きや撮影者の動きを予測して補正される仕組み。右側2この画像は今日着る服を撮影すると、それに合った壁紙デザインが生成される機能
AIを用いる機能として、今後のアップデートで「Magic Canvas」が追加される予定。テキストで指定したイメージの壁紙が生成される機能だ
AI機能については、両モデルともに発展途上ではあるものの、「Galaxy Z Flip6」は最先端の機能を利用でき、そのすごさに驚かされること請け合いだ。いっぽう「motorola razr 50」は驚くほどではなかった。話題になっている生成AIのサービスを存分に楽しみたいのなら、「Galaxy Z Flip6」を選ぶのが得策だ。
カメラを比較
類似したハードウェア性能で画質も満足できる
外側カメラはどちらも広角+超広角の2眼。「Galaxy Z Flip6」は広角(約5000万画素/F1.8)+超広角(約1200万画素/F2.2)、「motorola razr 50」は広角(約5000万画素/F1.7)+超広角(約1300万画素/F2.2)だ。なお、「motorola razr 50」の超広角カメラはマクロ撮影にも対応している。
左が「Galaxy Z Flip6」、右が「motorola razr 50」。どちらも約5000万画素をメインとするデュアルレンズカメラを搭載
どちらも外側のカメラで自撮りができる
両モデルでいろいろな被写体を撮ってみると、どちらもスッキリとした鮮明な色で写った。色調には若干違いが出たが、好みのレベル。おそらく多くの人が、どちらの撮影画質にも満足できるはずだ。
「Galaxy Z Flip6」の超広角で撮影
青空の鮮やかさが印象的。構図周辺の画質はやや流れている
「Galaxy Z Flip6」の広角(1倍)で撮影
深みのある青空と海の色は超広角カメラと統一感がある。解像感も良好
「Galaxy Z Flip6」の広角(2倍ズーム)で撮影
元の画素数が高いため2倍程度のズームも苦にならない
「motorola razr 50」の超広角で撮影
コントラストが少し高く、こちらも印象的な発色だ
「motorola razr 50」の広角(1倍)で撮影
超広角カメラと少し印象が異なり、より自然な印象だ。こちらも解像感が高く、ノイズは抑えられている
「motorola razr 50」の広角(2倍ズーム)で撮影
特有のノイズは抑えられており積極的に使いたい画質だ
料理も鮮やかで、夜景モードの画質も良好だった。背景をぼかして人物を際立たせるポートレートモードで愛犬も撮ってみたところ、「Galaxy Z Flip6」は毛並みが滑らかに写り、「motorola razr 50」は毛並みがクッキリと写るという違いが出た。どちらがいいというわけではなく、これも好みが分かれるだろう。
「Galaxy Z Flip6」で撮影
室内でスイーツを撮影した。陰影よりも全般的な鮮明さを重視しているようだ
「Galaxy Z Flip6」の「ナイト」モードで撮影
ハイライトから暗部、中間となる空まで良好な写りだ
「Galaxy Z Flip6」の「ポートレート」モードで撮影
背景をぼかす「ポートレート」モード。ピントを合わせる部分とぼかす部分の輪郭の判定に不自然さは見られない
「motorola razr 50」で撮影
室内でスイーツを撮った。「Galaxy Z Flip6」と比べると陰影が強調されているように見える
「motorola razr 50」の「ナイトビジョン」モードで撮影
こちらも鮮明な夜景が手軽にとれる。ハイライト部分がやや暖色に処理されている
「motorola razr 50」の「ポートレート」モードで撮影
毛並みの質感がよく残っている。輪郭判定も違和感のないものだ
動画撮影には、それぞれ独自の工夫が施されていた。「Galaxy Z Flip6」で便利だと思ったのは「オートズーム」。シーンや被写体に応じて、ズームが自動的に変化する機能だ。複数人で撮影する際に全員がフレームに収まるように調整される「自動フレーミング」もあり、SNSに公開する動画を撮る際に重宝しそうだ。
「motorola razr 50」で気に入ったのは「カムコーダーモード」。ハーフオープンで、ビデオカメラのように構えると、ディスプレイの左側にプレビューが表示され、右側にはタッチパッドが表示され、片手でスムーズにズーム調整ができる仕組み。折りたたみ型の特性を生かした非常に便利な機能と思えた。
「motorola razr 50」には、ビデオカメラのように構えて動画を撮れるモードが搭載されている
処理性能を比較
ベンチマークテストは「Galaxy Z Flip6」が、電池持ちは「motorola razr 50」がそれぞれ有利
「Galaxy Z Flip6」がハイエンドSoC、「motorola razr 50」はミドルレンジSoCであることは先述のとおり。しかし、基本アプリの使用感で動作性に差を感じることはなく、どちらもサクサクと快適に操作できた。メモリーはどちらも12GBで、マルチタスク操作もスムーズに行える。「motorola razr 50」はミドルレンジではあるが、基本アプリの体感速度はハイエンドに近い。
ベンチマークアプリ「Geekbench 6」で実際の処理性能測定した結果。左が「Galaxy Z Flip6」、右が「motorola razr 50」。SoCのグレードが異なるため、スコアにも大きな開きが出た。しかし、基本アプリの使用感に大差はない
バッテリー容量は「Galaxy Z Flip6」が4000mAhで、「motorola razr 50」が4200mAh。わずかな差ではあるが、「motorola razr 50」が上回る。どちらのモデルも1日は余裕で持続するが、2日目は厳しい印象だった。両モデルをまったく同じように使ったわけでないが、電力効率を重視したミドルレンジSoCを備える「motorola razr 50」のほうが若干電池持ちはよいように感じた。
そこで、それぞれをフル充電して、同じ条件で動画を再生してみた。「YouTube」の1080pの動画をフルスクリーン表示で4時間再生したところ、電池残量は「Galaxy Z Flip6」が65%、「motorola razr 50」は75%になった。電池残量は1時間おきにチェックしたが、電池の減り方がほぼ同じペースだった。やはり、電池持ちは「motorola razr 50」のほうがよさそうだ。
左が「Galaxy Z Flip6」、右が「motorlora razr 50」の「バッテリー」の画面。両モデルで同じ動画を4時間再生すると、「motorola razr 50」のほうが多くの電池が残った。
携帯性や生成AIなら「Galaxy Z Flip6」、サブディスプレイの機能性なら「motorola razr 50」
縦折りのフォルダブルスマホは、折りたたんだ状態でも素早くカメラを起動でき、セルフィーが撮れることが利点。そのため、自撮りをする機会が多い若い女性などをメインターゲットにしがちだ。しかし、外側ディスプレイが大きくなり、機能が拡張されたことで、タイムパフォーマンスを重視する人にとっても魅力を増したように感じた。
比較した両機は、SoCのグレードが異なるものの、基本アプリを使う日常の使用なら大きな違いはない。むしろ、携帯性や生成AIなら「Galaxy Z Flip6」を、サブディスプレイの機能性なら「motorola razr 50」を、という具合で、機能性に注目したほうがよい買い物につながりそうだ。
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