アップル製のノートPCであるMacBook(マックブック)が欲しくなったものの、どのモデルを買うべきかという判断は難しいもの。本企画では、改めてMacBookのラインアップをおさらいしつつ、各機種の特徴・仕様や、選ぶ際のポイントについて解説します。なお、表記の価格は、2024年9月時点におけるApple Storeオンラインでの税込価格です。
「MacBook Air」で十分か、それとも「MacBook Pro」にすべき?
MacBookを選ぶメリットとは?
MacBookの特徴のひとつとしては、各ブランドの最小構成のモデル(つまり、いちばん安い仕様の製品)を選択しても、処理性能が比較的高いことがあげられます。
そのため、さほどPCのスペックに詳しくない人が価格を重視した選択をしても、大きな失敗につながりにくいです。
また、iPhoneやiPadを使っている人にとっては、「メモ」や「リマインダー」「カレンダー」など、使い慣れた多くのアプリケーションを、Macでも共通して使えることもポイントです。
iCloud(アイクラウド)を介したデバイス間のデータ同期のしやすさも見逃せません。ほかにも、AirDrop(エアドロップ)による共有操作や、「探す」ネットワークによる紛失時の捜索なども、共通して使えます。
iPhoneなどほかのアップル製品と連携できる点も、Macの特徴
さらに、macOS(マックオーエス)の設定項目やUIデザインなどは、アップル製品ユーザーにとって理解しやすく整っています。そのため、iPhoneやiPadのユーザーが初めてノートPCを購入する場合には特におすすめです。
今回取り上げるMacBookシリーズについては、こうした特徴に加え、さらに持ち運びながら場所を問わずに運用できるノートPCとしてのメリットも加わります。
MacBookのラインアップ
2024年9月時点では、Apple Storeオンラインにて以下の6機種が展開されています。
・13インチMacBook Air(M2):2022年7月発売、M2チップ搭載
・13インチMacBook Air(M3):2024年3月発売、M3チップ搭載
・15インチMacBook
Air(M3):2024年3月発売、M3チップ搭載
・14インチMacBook Pro(M3):2023年11月発売、M3チップ搭載
・14インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3
Max):2023年11月発売、M3 ProまたはM3 Maxチップ搭載
・16インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3 Max):2023年11月発売、M3 ProまたはM3 Maxチップ搭載
2024年7月時点のラインアップは、「MacBook Air」と、上位の「MacBook Pro」という2種類のシリーズに分かれています。「MacBook Air」は13インチと15インチの2サイズ、「MacBook Pro」は14インチと16インチの2サイズが展開されています。なお、Touch Barを搭載する「13インチMacBook Pro(M2)」は、2023年秋に新モデルが発表されたタイミングでラインアップから姿を消しました。
それぞれの最小構成での価格は、「MacBook Air」が148,800円~、「MacBook Pro」が248,800円~で、その差は約10万円。そのため、コストを重視したい場合には「MacBook Air」を、処理性能の高さやインターフェイスの豊富さなどを重視するプロフェッショナルなユーザーや、それに近い作業を想定するハイアマチュア層であれば、「MacBook Pro」をチェックするのが基本方針となります。
なお、コンピューターの頭脳であるチップセットとしては、Appleシリコン(アップルがARMアーキテクチャを使用して設計した自社製SoC)の「M」シリーズが採用されています。ラインアップの中では、「13インチMacBook
Air」の一部モデルのみ、2022年6月に発表された「M2」チップが搭載されており、その他のモデルでは2023年10月に発表された「M3」シリーズのチップセットが使われています。
その処理性能は、M2<M3<M3 Pro<M3 Maxという順番で上がっていきます。チップセットのパフォーマンスにはさまざまな要素が影響するものですが、ここでは単純化して、内蔵するトランジスタ(電子回路において電流の流れをコントロールするための半導体素子)の数を比較しておきましょう。チップセットの規模にどのくらいの差があるのかをイメージしやすくなるはず。特にM3 Maxチップはほかを圧倒するトランジスタの数です。
・M2:2022年6月発表、トランジスタ200億個
・M3:2023年10月発表、トランジスタ250億個
・M3 Pro:2023年1月発表、トランジスタ370億個
・M3
Max:2023年1月発表、トランジスタ920億個
次章からは、それぞれのモデルの特徴を解説していきましょう。
MacBook全モデル解説
価格優先の「13インチMacBook Air(M2)」でも動画編集までしっかりカバー
現状のラインアップで最安の選択肢が「13インチMacBook Air(M2)」です。価格は最小構成で148,800円~。カラーバリエーションは、ミッドナイト、スターライト、スペースグレイ、シルバーの4色です。
搭載するディスプレイは13.6インチで、上部にノッチのあるデザインを採用しています。重量は1.24kg。インターフェイスとしては、Thunderbolt/USB 4ポート×2のほかに、マグネットで固定する充電用端子「MagSafe 3」を搭載します。
M2チップについては、8コアGPU版と10コアGPU版の2種類を選択可能。同世代のチップにおいても、「メディアエンジン」という動画のエンコード/デコード専用回路を備えており、カジュアルな動画編集作業であれば十分効率的に取り組めるでしょう。また、メモリーは8GB、16GB、24GBから選択可能。ストレージは、256GB、512GB、1TB、2TBから選べます。バッテリー駆動時間は最大18時間です。
カメラやスピーカーに関しても、FaceTime HDカメラ(内蔵Webカメラ)が1080pの解像度(フルHD)に対応しています。また、内蔵スピーカーは「4スピーカーサウンドシステム」を採用し、高音域用のツイーターと低音域用のウーファーが分かれています。立体音響技術のDolby Atmosに対応した音源や動画を、アップルがサポートする空間オーディオとして再生することも可能です。
また、3.5mmヘッドフォンジャックが「ハイインピーダンス」のヘッドホンにも対応しており、多くのヘッドホンで想定された音量や音質をしっかりと再現できることも知っておきましょう。
ゲームも遊びたいなら「13インチMacBook Air(M3)」も要検討
2024年3月に発売された「13インチMacBook Air(M3)」の価格は、最小構成で164,800円~。「13インチMacBook Air(M2)」の最小構成に16,000円を上乗せすれば、こちらにも手が届きます。メモリーは8GB、16GB、24GBから、ストレージは256GB、512GB、1TB、2TBから選択可能です。
外観やデザインについては「13インチMacBook Air(M2)」からの変更はありません。ディスプレイサイズや解像度、カメラの解像度、端子類、キーボードなどの構成も基本的に共通しています。ポート類は、Thunderbolt 3/USB 4×2、MagSafe 3、3.5mmヘッドホン出力/マイク入力を備えます。カラーバリエーションはミッドナイト、スターライト、スペースグレイ、シルバーの4色です。
M3チップを搭載するメリットは、主に3つあります。1つ目は、チップセットの処理性能が高まったこと。M3チップは、3ナノメートルプロセスで設計されており、5ナノメートルプロセスのM2チップよりも内蔵するトランジスタ数が多く、その分のパワーを発揮します。また、GPUは「メッシュシェーディング」や「レイトレーシング」をサポートしており、ゲーミングやCG関連の作業におけるメリットがあります。
2つ目は、外部ディスプレイの接続が新たに最大2台まで対応したこと。ただし、2台の外部ディスプレイを接続する際には、本体の画面を閉じなければいけません。
3つ目は、「Wi-Fi 6E」をサポートしていることです。Wi-Fi 6E対応のWi-Fiルーターを使う際に、6GHz帯の通信が利用できます。
なお、バッテリー駆動時間については最大18時間であり、M2搭載モデルと比べても差はありません。
作業領域の広さやスピーカーにこだわるなら「15インチMacBook Air(M3)」
M3チップ搭載の「MacBook Air」は13インチのほかに、15インチの「15インチMacBook Air(M3)」も選択できます。価格は最小構成で198,800円~。「13インチMacBook Air(M3)」と比べると34,000円の差です。カラーは、こちらもミッドナイト、スターライト、スペースグレイ、シルバーの4色です。
多くの仕様については、基本的に先述した「13インチMacBook Air(M3)」と共通。いっぽうで、ディスプレイサイズは15.3インチに拡大し、本体サイズは34.04(幅)×23.76(奥行)×1.15(厚さ)cm。重量は1.51kg。「13インチMacBook Air(M3)」の30.41(幅)×21.5(奥行)×1.13(厚さ) cm、重量1.24kgと比べると、ひと回り大きくなります。
その半面、バッテリー持ちはこちらも最大18時間で、「13インチMacBook Air(M3)」と比べて差はありません。ただし、同梱される充電アダプターについては、標準で「デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプター」になるため、「13インチMacBook Air(M3)」で8コアGPUモデルを選択した際に付属する「30W USB-C電源アダプター」とは若干の差があります。
ディスプレイやサイズ以外の仕様面では、搭載するスピーカーが「15インチMacBook
Air(M3)」だと「フォースキャンセリングウーファーを備えた6スピーカーサウンドシステム」になることがポイント。13インチモデルの「4スピーカーサウンドシステム」よりも迫力のある音を再生できます。
そのため、ゲームや動画視聴などのエンタメ系コンテンツを楽しんだり、動画編集やDTMなどの音が関係するクリエイティブな操作を想定したりする場合は、15インチモデルを選択するメリットが強まるでしょう。
本格的にクリエイティブな作業を想定するなら「14インチMacBook Pro(M3)」
より性能を求めるなら「14インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3 Max)」
将来的にプロフェッショナルに近いレベルでクリエイティブなソフトを扱う可能性があるならば、M3チップ、およびM3 Pro/M3 Maxチップを搭載する「14インチMacBook Pro(M3)」が視野に入ってきます。価格は248,800円~。カラーはM3チップ搭載モデルがスペースグレイ、シルバーの2色。M3 Pro/M3 Maxチップ搭載モデルがスペースブラック、シルバーの2色展開です。
豊富なインターフェイスを求めて「MacBook Pro」シリーズを検討する場合には、M3チップ搭載モデルでも十分な場合が多いでしょう。具体的に、M3チップ搭載モデルはThunderbolt/USB 4(USB-C)ポート×2に加えて、HDMIポートとSDXCカードスロットを搭載。バッテリー駆動時間は最大22時間まで伸びます。
また、M3搭載モデルでは、メモリーが8GB、16GB、24GBから、ストレージが512GB、1TB、2TBから選択できます。
いっぽう、専門的なソフトウェアを駆使する職業などで、継続的に高い処理性能が必要になる場合には、上位のM3 ProチップやM3 Maxチップを搭載したモデルも検討候補に入ってきます。
もちろん、処理性能自体も上がりますし、インターフェイスについても、M3チップ搭載モデルよりもThunderbolt/USB 4(USB-C)ポートが1基多い3基となります。外部モニターの接続については、M3
Proチップ搭載モデルなら最大2台に、M3 Maxチップ搭載モデルなら最大4台に画面拡張が可能です。
ただし、上位構成のチップセットを選択すると、以下のように一気に差額が跳ね上がります。
・M3(8コアCPU、10コアGPU):+0円~
・M3 Pro(11コアCPU、14コアGPU):+80,000円~
・M3 Pro(12コアCPU、18コアGPU):+150,000円~
・M3
Max(14コアCPU、30コアGPU):+290,000円~
なお、M3 ProチップとM3 Maxチップ搭載モデルでは、メモリーが18GB、36GB、48GB、64GB、96GB、128GBから、ストレージが512GB、1TB、2TB、4TB、8TBから選択できます(チップセットごとに選択できる数値が限定されます)。
ちなみに、バッテリー持ちは最大18時間となり、M3搭載モデルより若干短くなります。
このほか、ディスプレイとオーディオも、「MacBook Pro」シリーズの全モデルに共通して注目しておきたいポイントです。
「MacBook Pro」シリーズのディスプレイは、ミニLEDを採用したバックライトによって、輝度がピーク輝度1600ニト、持続輝度1000ニトを実現しています。
「MacBook Air」の輝度500ニトに対してより明るく、HDR対応のコンテンツの制作や再生などに適しています。また、画面のリフレッシュレートも最大120Hzに対応しています。
オーディオについては、内蔵スピーカーとして「フォースキャンセリングウーファー」を備えた、原音に忠実な6スピーカーサウンドシステムを搭載。振動を抑えながらクリアな低音を発することができるため、内蔵スピーカーで臨場感をともなったサウンドを再現できます。
仕事で飛び回るプロフェッショナルなら「16インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3 Max)」
「16インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3 Max)」は、「14インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3 Max)」と多くの仕様を共通しつつ、画面サイズを16.2インチまで拡大したモデルです。
モバイルワークステーションとしては、“憧れの1台”のような存在。場所を問わずにクリエイティブな作業を大きな画面で行いたい場合にポテンシャルを発揮するでしょう。選択できるチップセットは、M3 ProチップかM3 Maxチップのみ。価格は398,800円~です。カラーはスペースブラック、シルバーの2色展開。
「MacBook」シリーズにおいて最大の作業領域を誇るいっぽうで、「16インチMacBook Pro」のサイズは35.57(幅)×24.81(奥行)×1.68(厚さ)cmで、重量は2.14kg(M3 Pro)、2.16kg(M3 Max)。「14インチMacBook Pro」の31.26(幅)×22.12(奥行)×1.55(厚さ)cm、重量1.61kg(M3 Pro)、1.62kg(M3 Max)と比べると、携帯性はどうしてもトレードオフになります。
多くの基本仕様は「14インチMacBook Pro(M3 ProまたはM3
Max)」と共通しますが、ディスプレイサイズ以外の差分としてはバッテリー持ちがあり、最大22時間駆動を誇ります。また、標準で付属する電源アダプターが、ほかモデルではオプションの選択肢にない140Wモデルであることも特徴です。
どのMacBookを選べばいいか
MacBookのラインアップの中で圧倒的なコストパフォーマンスを誇るのは、「13インチMacBook Air(M2)」であり、150,000円弱で手が届きます。M2チップでも動画編集のためのメディアエンジンが搭載されており、動画編集用途でも十分通用するでしょう。なるべく安くMacBookを手に入れたい人には、非常にいい選択になるはずです。
いっぽうで、数万円の追加予算を出せるならば、サポート期間の長さも伸びるため、やはりチップセットを最新のM3シリーズに刷新した「13インチMacBook Air(M3)」や「15インチMacBook Air(M3)」を選ぶのがおすすめ。最小構成に近いモデルならば、20万円以内の予算でも検討しやすいはずです。
予算に余裕があるなら、今後のことを考えて「13インチMacBook Air(M2)」ではなく、「13インチMacBook Air(M3)」や「15インチMacBook Air(M3)」を選びましょう。
そして、プロフェッショナルに近いレベルでクリエイティブな作業を想定するならば、「MacBook Pro」シリーズを検討しましょう。この際、インターフェイスやスピーカーなどの仕様にこだわる程度ならば、「14インチMacBook Pro(M3)」で十分です。
もし用途として処理性能にこだわる作業を想定しているならば、惜しまずにM3 Pro、もしくはM3 Max搭載モデルも検討候補に入れましょう。ただし、ここからは価格が最小構成でも328,800円に跳ね上がり、実践的な仕様のカスタマイズを選択するとすぐ400,000円~500,000円台に突入します。
アップルでは「ペイディ」を活用した金利0%の24回払いを選択できるので、まとまった予算を確保しづらい場合には、月額20,000円前後を2年間支払う前提で検討するのが、現実的になってくるかもしれません。
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