VRゴーグル黎明期から開発を続け、VRデバイスではパイオニアとも言えるHTCより、スタンドアローン型としても、PC接続型(PCVR)としても使える新型「VIVE Focus VIsion」が登場。気になるその実力を体験してきたので所感をお届けする。
HTC「VIVE Focus VIsion(Consumer Edition)」、公式サイト販売価格169,000円(税込、以下同)、2024年10月18日発売
スタンドアローンにもPCVRにも対応
2024年9月24日、HTCより新型XRヘッドセット「VIVE Focus Vision」が発表された。本機は、PCと接続せずに使えるスタンドアローン型でありながら、「DisplayPortモード」でロスレスPCVR機としても使える両刀機だ。体の動きをトラッキングするためのベースステーションを使わずに、フルボディのトラッキングが可能となっており、単独でVR体験を手軽に始めたい人から、SteamVRのヘビーユーザーまで、用途に応じた自由度の高い使い方に対応してくれる。
スクリーンは「LCDパネル」×2で、解像度は5K(片目あたり2448×2448)、最大120度の視野角を持ち、リフレッシュレートは90Hz。2024年の年内に、「DisplayPortモード」での120Hzリフレッシュレートに対応するアップデートが予定されている。
ゴーグルを装着した状態で現実世界を見るための立体パススルー機能は、2つの高感度カメラによるステレオフルカラー。さらに、シーン認識のための深度センサーにより、深度の正確な映像を表示する。また、薄暗い場所でのハンドトラッキング性能を高める赤外線センサーも搭載されている。
パススルーは前面に付いた2つの「16MPカラーカメラ」で行う
視線入力を行うアイトラッキングは、「自動IPD調整機能」を搭載することで、ゴーグルの着用者が変わっても、装着後すぐにレンズの瞳孔間距離を自動で調節。友人や家族にゴーグルの映像を見せたい場合も、スムーズに着用者を移行できるようになっている。
プロセッサーは「Snapdragon XR2」、メモリー12GB。128GBの内蔵ストレージは、microSDを使って最大2TBまでの拡張が可能となっている。
人間工学に基づき長時間の着用を想定した形状
背面中央のダイヤルを回して装着感を調節する
交換可能な着脱式バッテリーの稼働は最大2時間。付属のアダプターによる30分の充電で、最大50%の充電が可能とのこと。ゴーグル本体にサブバッテリーが内蔵されており、バッテリーの交換中でも、最大20分間の単独動作が可能となっている。また、コントローラーの内蔵バッテリーは最大15時間の駆動が可能で、USB Type-Cポート経由での充電となる。
着脱式の「VIVE Focusシリーズ用バッテリー」は、単独でも購入可能。公式サイト販売価格は13,200円
また、PCとのロスレス接続を行うための有線ストリーミングケーブル「VIVE Wired Streaming Kit」は、29,000円で購入可能だ。
高性能なパススルー機能が快適
ここからは「VIVE Focus Vision」を着用しての実体験を報告したい。
まず、VRゴーグルの装着で課題となるのが重さだが、「VIVE Focus Vision」は重量が公式でも明らかにされていない。だが、見ためのゴツさに対して、着用してそこまでの重さは感じなかった。わずか数分の着用であったため、長時間での着用とは異なるだろうが、期待が持てる印象だ。
「MR」空間で、上下左右から登場する敵の攻撃を避けつつ、打ち返すというシューティングゲームに挑戦した。ゴーグル装着後に自動でIPD調節が行われ、パススルーによる現実世界が現れた。映像はとてもクリアで、先ほど自分が見ていた世界と違和感のないもの。手元のハンドトラッキングも遅延は感じない。そこに上下左右から敵が登場するので、頭を大きく回して敵を視認する必要があるのだが、大きなゴーグルを着用しているほどの重量感は感じず、頭を振ったことでのゴーグルのズレもなかった。
ゴーグルのサイズは大きいが、フィット感は良好
また、頭上や背面など、死角にいる敵の位置を把握する必要があったのだが、120度の視野角は広く、パススルーの映像が視野から外れることはなかった。振り返ったときも、背中側の壁をしっかり視認できるので、狭い部屋でも問題なく使用できそうだ。
有線でのPCVRも遅延なくスムーズ
PCのGPU性能を最大限に生かすことのできる「DisplayPortモード」は、映像圧縮が必要となるUSB接続や無線接続では実現できない、高画質と低遅延でのPCVR体験が可能となっている。
筆者がVRゲームの操作に慣れていないため、ゲームは決して快適に遊べたわけではなかったが、ハンドトラッキングで手元の銃を手に取ったり、目の前にある箱を開けたりといった、操作での遅延は感じなかった。ゾンビシューティングのゲームだったのだが、あたふたしながら次第にゾンビに取り囲まれていく恐怖感はVRならではの貴重な体験だった。
慣れないVR空間でドギマギ中の筆者
また、「VIVE Focus」シリーズには、既存のアクセサリー類が充実しており、今回の「VIVE Focus Vision」と併用することでも、XR体験は向上するようだ。
実際に体験はできなかったが、別売りの「フェイシャルトラッカー」を使用すれば、アイトラッキングだけでなく、口の動きや表情もアバターを通じて表現することが可能となる。
ゴーグルの鼻部分に装着している「フェイシャルトラッカー」14,900円
快適に使えるXRゴーグル
PCVRに比べて、性能が劣ると言われるスタンドアローン型のVRゴーグルだが、「VIVE Focus Vision」に関して言えば、操作性、着用感などきわめて快適だった。現段階でVRゲームか、VR CHATをやってみたいという人が多いと思うが、そのどちらも問題なく楽しめるうえ、PCVRとしても、スタンドアローンでも使える自由度は、用途が明確でないユーザーであるほどほどありがたい。とりあえず使ってみたいというユーザーにとっては、少々価格は高めだが、買ってから後悔することのない、安心感のあるXRゴーグルと言えるだろう。
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