「24-70mm F2.8 DG DN II | Art」(以下、「24-70mm F2.8 DG DN II」)は、シグマが2024年5月30日に発売した、ソニーEマウント用の大口径・標準ズームレンズ(フルサイズ対応)。名称の「II」が示すとおり、「24-70mm F2.8 DG DN」(2019年12月発売)の後継モデルです。
従来モデルと比べると、光学系はもちろんのこと、AFや操作性、サイズ感にいたるまで全面的に設計を刷新。製品ページに「描写力、機能性、携行性、すべてが進化したフラッグシップモデル」と書かれているとおり、まったく別モノの高性能レンズとして生まれ変わっての登場です。
ライカLマウント用とソニーEマウント用が用意されていますが、今回紹介するのはソニーEマウント用。ソニーの最上位「GMレンズ」(「G Masterレンズ」)の「FE 24-70mm F2.8 GM II」との比較を交えながらレビューしていきたいと思います。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」とソニー「α7R V」を組み合わせたイメージ
こちらはソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と「α7R V」を組み合わせたイメージ
性能を向上させながら小型・軽量化に成功
まずは、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」のサイズ/重量を確認しておきましょう。シグマが力を入れて開発した新世代の大口径・標準ズームだけあって、サイズ感にもこだわって設計されています。ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と並べて比較してみました。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」(ソニーEマウント用)
87.8(最大径)×122.2(全長)mm/735g
ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」
87.8(最大径)×119.9(全長)mm/約695g
左がシグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」で、右がソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」。最大径は同じですが先端部以外はシグマのほうがスリムですね
ミラーレス用に設計された最新の高性能レンズは、性能と小型・軽量の両立を図っているのがトレンドです。シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」とソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」は、まさにこうした最新の高性能レンズ。光学性能やAF性能を追求しながら小型・軽量化を目指すという、難しい課題をクリアしています。
両レンズを比べてみると、サイズ感にそれほど大きな差はないように見えます。いずれも性能の高さを考慮すると十分にコンパクト。最大径は奇跡のように同じ87.8mm(もしかしたら意識してのこと?)で、全長はシグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」のほうが2.3mmだけ長いです。ほとんど同じサイズとみなして問題ないでしょう。
重量はシグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」のほうが40g重いです。持ち比べてみると確かに違いを感じますが、実用上はほとんど気にしなくてよい程度の差だと思います。
絞りリングの搭載など、より現代的な操作性に進化
続いて、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」の操作性を見ていきましょう。
ズーム方式は、ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と同様に繰り出し式。広角端から望遠端にズーミングすると鏡筒は伸長していきますが、伸ばすことによって大きくバランスを崩すことはありません。最新の高性能な標準ズームらしく、使い勝手に配慮した設計を採用しています。
望遠端70mm時。鏡筒が最も伸長した状態になります
リング類は、レンズ先端からフォーカスリング、ズームリング、絞りリングの順で並んでいます。従来モデルは絞りリングがなかったので、この搭載は非常にうれしいです。さらに、従来モデルでは1か所のみだった「AFLボタン」(※機能割り当てが可能)を2つ搭載。側面に加えて上位置にも配置することで、横位置だけでなく縦位置でもボタン操作ができるように工夫されています。
レンズ先端からフォーカスリング、ズームリング、絞りリングと並ぶリング類。絞りリングの搭載はI型と異なるところ
鏡筒左側面に目を向けると、「フォーカスモード切換えスイッチ」と、「絞りリングクリックスイッチ」の2つのスイッチが配置されています。右側下方には、鏡筒の伸縮を広角端でロックできる「ズームロックスイッチ」をさりげなく搭載。このあたりの充実した操作性は、フラッグシップモデルを名乗るだけのことはあります。
鏡筒左側に備えられた「フォーカスリミッタースイッチ」と「絞りリングクリックスイッチ」
「ズームロックスイッチ」も備わっています
立派な作りのレンズフード「LH878-05」が付属するのも見逃せません。見栄えがよいというだけでなく、着脱しやすく、遮光効果も高いと感じました。付属品にもできる限り品質を追求するシグマの姿勢には好感が持てます。
花形のレンズフード「LH878-05」が同梱します。立派な作りです
以下に掲載する比較作例について
比較写真はすべてJEPG形式の最高画質「エクストラファイン」を選択し、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オートの設定で撮影しています。
解像性能の比較(広角端/絞り開放)
ここからは、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」とソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」の解像性能を比較していきます。
まずは、広角端/絞り開放から。以下に、それぞれのレンズで撮影した作例を掲載します。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」 24mm/F2.8で撮影
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、24mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
シグマは、「至高の標準」というキャッチコピーで「24-70mm F2.8 DG DN II」の性能の高さをアピールしています。実際、光学性能は非常に高く、広角端24mm/絞り開放でも画面全体で抜群の解像力を発揮してくれます。特に画面中央付近の解像性能は一級品と言ってもよく、ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と比べても、遜色ないどころか勝っているように見えます。さすがに画面の隅では中央部よりも解像感が低下するようですが、それもわずかなことで問題になるレベルではないと思います。
少し気になったのは周辺減光。カメラ側の周辺減光補正を「オート」にして撮影しましたが、ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と比べると減光が目立つ結果になりました。
ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」 24mm/F2.8で撮影
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、24mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
ソニーの最上位「GMレンズ」の2代目標準ズームだけに、こちらも、絞り開放から画面全体ですばらしい解像感を見せてくれています。特筆したいのは、画面周辺でも解像感がほとんど低下していないところ。画面全体での均質性や安定性では、こちらのほうがすぐれていると言えると思います。
切り出し画像(中央部)
切り出し画像(周辺部)
解像性能の比較(望遠端/絞り開放)
続いて、望遠端/絞り開放で撮影した作例を見ていきましょう。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」 70mm/F2.8で撮影
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、70mm、F2.8、1/2000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
望遠端70mm/絞り開放の傾向は、広角端とほとんど変わりません。画面中央はシグマらしい目を見張るようなシャープな描写で、画面周辺部では解像感がゆるやかに低下していくという結果でした。解像感が低下するといっても、実用上ほとんど問題のないレベルであるところも同じです。
なお、望遠端でも望遠端と同様、絞り開放ではやや周辺減光が目立つ結果になりました。
ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」 70mm/F2.8で撮影
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/2000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
こちらも、広角端と望遠端で傾向に大きな違いは見られません。画面の中央部と周辺部で「GMレンズ」らしい、非常に高い解像感を見せてくれます。絞り開放でこれですので、少し絞ればさらに安定した画質が得られます。このあたりの光学性能の高さはサスガと言ったところでしょう。
切り出し画像(中央部)
切り出し画像(周辺部)
解像性能の比較まとめ
2本のレンズで解像性能はほとんど差がないレベルだと感じました。画像を拡大して確認すると、わずかに周辺部で差異が見られるものの、実用上はどちらも最高レベルの解像力を誇っていると思います。
最短撮影性能の比較
ミラーレス用の高性能レンズは、最短撮影性能も大きく向上しています。広角端24mmと望遠端70mmの最短撮影距離で撮影した作例を掲載しながら、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」とソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」の違いを確認していきましょう。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」 24mm/最短撮影距離で撮影
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、24mm、F2.8、1/800秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」 70mm/最短撮影距離で撮影
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、70mm、F2.8、1/800秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」の広角端の最短撮影距離は17cmで、このときの撮影倍率は約0.37倍。ここで最大撮影倍率となります。上の作例をご覧いただきたいのですが、広角端ではまるでマクロレンズで撮ったかのような印象的な写真に仕上がっています。本レンズの最短撮影性能は広角側で最大限に生かされると言ってよいでしょう。
いっぽう、望遠端での最短撮影距離は34cmで、このときの撮影倍率は0.25倍です。広角端の近接撮影性能があまりにも高いため見劣りしてしまうかもしれませんが、それでも1/4倍マクロを実現しています。焦点距離70mmであることを考えると、これまた非常に寄れる部類だと言って差し支えないでしょう。
ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」 24mm/最短撮影距離で撮影
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、24mm、F2.8、1/800秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」 70mm/最短撮影距離で撮影
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/800秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」の広角端の最短撮影距離は21cm。このときの撮影倍率は公表されていませんが、作例を見比べると、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」ほどは被写体を大きく写せないことがわかります。とはいえ、標準ズームの広角端としては寄れる部類です。
また、望遠端での最短撮影距離は30cm。このときの撮影倍率は0.32倍で、これが最大撮影倍率になります。くしくもシグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」の最大撮影倍率(約0.37倍、広角端)に近い値です。
最短撮影性能の比較まとめ
両レンズは最短撮影性能の特徴が異なっていて、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」は広角端での近接撮影性能が高く、ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」は望遠端での性能が高いということになります。どちらも、標準ズームとしては「被写体に近寄って大きく写せる」ことは間違いがありませんが、広角マクロで被写体に寄れることを考慮すると、シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」のほうが、全体的には近接撮影性能が高いと言ってよいでしょう。
シグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」 このほかの特徴を作例で紹介
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、24mm、F8.0、1/800秒、ISO400、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:VV
いろいろな条件で太陽を画面内に入れて試してみましたが、ゴーストやフレアはほとんど見られませんでした。コーティングやレンズ設計が配慮されているようで、逆光耐性は非常に高いレンズだと思います。広範囲が写りこむ広角側も安心して使えます。
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、70mm、F2.8、1/80秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
若いカラスがなぜか逃げずにいたので撮らせてもらいました。「α7R IV」の被写体認識(鳥)は、もちろん本レンズでも問題なく使えます。アクチュエーターにリニアモーターが採用されているため、AFは非常に高速かつ正確。I型と比べて3倍以上の高速化を達成しているそうです。
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、50mm、F2.8、1/60秒、ISO250、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
同じく被写体認識(動物)で猫を撮影。手前に自転車があるにもかかわらず、迷うことなく猫の瞳にピントを合わせてくれました。前後のボケ味も見事なもので、硬すぎたり2線ボケが発生したりすることなく、素直できれいです。
α7R V、24-70mm F2.8 DG DN II、64mm、F2.8、1/1600秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:VV
水やり中の花壇の花を撮らせてもらいました。濡れた花の質感描写がなんとも艶めかしいです。試用中はさまざまな焦点距離で撮影を行いましたが、いずれの場合でも描写性能は常に優秀でした。ズーム全域で安心して撮影することができます。
まとめ シグマ本気度が強く感じられる大口径・標準ズーム
II型として登場したシグマ「24-70mm F2.8 DG DN II」は、性能を向上させるとともに小型・軽量化を目指したことで、ミラーレス用の高性能な標準ズームとしてより現代的なレンズに生まれ変わりました。
サイズ感はソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と同等と言って問題なく、描写性能についても傾向の違いこそあれ、勝るとも劣らない実力を持っています。それでいて、作りがしっかりとして剛性感が高く、使っていて頼もしさが感じられるのも高ポイントでした。シグマの「Art」ラインのレンズはどれも高い完成度を誇りますが、そのなかでも、シグマの本気度が強く感じられる1本だと思います。
価格.com最安価格は約177,980円(ソニーEマウント用、2024年7月29日時点)。ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM II」と比べると80,000円ほど安く、コストパフォーマンスはとても高いです。ハイクラスな純正レンズの強力なライバルとなることは間違いないでしょう。
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