旅を楽しむ、カメラを楽しむことをコンセプトに、フォトグラファーの河野鉄平(通称テッピー)が、カメラ片手に旅に出る連載企画「旅カメラ周遊記」。今回は、小江戸情緒あふれる千葉県の水郷佐原に行ってきました。舟巡りも楽しめる場所です。レトロな街並みをスナップしてきました。
今回の旅のお供は、ニコンのAPS-Cミラーレスカメラ「Z fc」と、キットレンズとして用意されている単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」。このレンズキットはずっと首から提げていたくなるようなスタイリッシュなフォルムが何とも魅力的。今回のような旅にぴったりです
掲載する写真作例について
写真はすべてJPEG形式(最高画質)で撮影しています。ヴィネットコントロール:標準、回折補正:オン、自動ゆがみ補正:オンに設定しています。
今回の旅のベストショット!
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F6.3、1/160秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:風景
古い街並みが魅力的な佐原(さわら)
こんにちは、テッピーです。
今回の旅先は、千葉県香取市にある水郷佐原です。利根川の支流、小野川沿いに残る古い街並みが魅力の観光地で、伊能忠敬が家業を行っていた場所としても有名です。
SNSなどでも、古い町家の間を舟巡りする様子がアップされていて、一度足を運んでみたいと思っていた場所です。
JR佐原駅。駅の入り口はまるで町家の玄関口のよう。JR佐原駅まではJR成田駅から30分ほど。都内から車で向かう場合、佐原界隈までは1時間30分ほどです。東京駅から高速バスも運行しています
Z fc、NIKKOR Z
28mm f/2.8、F8、1/1000秒、ISO400、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
駅のロータリーには伊能忠敬像が駅のほうを指差して立っています。伊能忠敬は日本各地を測量し、日本で初めて実測で日本地図を完成させた偉人です
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F8、1/1600秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
佐原の町家風景が広がる川沿いまでは徒歩15分ほど。ゆっくりスナップしながら向かいます
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F10、1/400秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F2.8、1/1000秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F8、1/250秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:カーボン
スタイリッシュで携行性にすぐれたコンビ
今回の旅で使用した「Z fc」と「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」は、旅先の情景を気軽にスナップするのに向いた組み合わせです。
まず何と言っても軽い! 「Z fc」は有効2088万画素のAPS-C機ながら約445g(バッテリー、メモリーカードを含む、ボディキャップを除く)という軽さです。携行した「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」は約160gで、「Z fc」と合わせても約605g。旅スナップでは、持っていることを気にせず撮影に臨めることがとても大事です。重さがストレスにならないことで撮影に集中できます。
また、「Z fc」はAPS-C機(DXフォーマット)のため、「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」を装着すると35mm判換算で焦点距離42mm相当の画角が得られるのもポイント。ややワイド気味に情景を切り取れるので、スナップで非常に扱いやすい画角と言えます。最短撮影距離も0.19mでかなり寄れる印象。単焦点ながら寄り引きを意識することで、バリエーション豊かに撮影できそうです。
「Z fc」は、1982年発売のフィルム一眼レフカメラ「FM2」にインスパイアされて作られた1台。「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」は、フィルムカメラ時代に人気を博した「AI NIKKORレンズ」を模倣したデザインが特徴で、「Z fc」のレトロな雰囲気にフィットするレンズです
マニュアル操作を楽しめるのも「Z fc」の魅力のひとつ。上面のダイヤルで感度、シャッタースピード、露出補正を調整できます。ダイヤルの配列も美しいです
上面には絞り値が表示される小窓も用意されています。ダイヤル表記のシャッタースピード/感度とあわせて露出設定をひと目で確認できるのが便利です
背面の親指で操作できる位置にメインコマンドダイヤルを、前面の人さし指や中指で操作できる位置にサブコマンドダイヤルとFnボタンを装備。このあたりのダイヤルやボタンを自分好みにカスタマイズすることで操作性を高められそうです
撮影モードの切り替えは専用レバーで行います
「Z fc」のデザイン面では、ダイヤルの1つひとつがアルミ削り出しで、モニター背面に革シボ風の加工が施されているのもポイント。ずっとカメラに触れていたくなるような手触り感なのがすてきです。
ボディのサイズは約134.5(幅)×93.5(高さ)×43.5(奥行)mmで、人によっては少し大きめに感じる大きさかもしれません。ただ、ボディが少し大きい分、ダイヤル操作がしやすいのがポイント。個々のダイヤルやレバーが大きいのでスムーズな操作が可能です。
川沿いの古い町並みを撮る
佐原駅からぶらぶら歩きながら、観光スポットの小野川周辺へ。川が見えてくると、ぱっと急に視界が開けます。川の両側を古い木造建築がずらり。その美しさに息を呑みます。
こうした風景や建物を撮る際は、やはり水平・垂直を意識したいです。ここでは河川や建物のラインを確認しながら構図を決めて撮りました。
川のほとりの柳が風に舞って、とても風流があります。小野川周辺のこの界隈は利根川舟運の中継地として、江戸時代の後期には大変な賑わいを見せていたそうです。江戸へ物資を運んでいたこともあって、佐原は北総の小江戸と呼ばれるまでに成長していきました
Z
fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F9、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:風景
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、1/160秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:風景
川沿いには歴史的建造物の町家をリノベーションして作られたレストランやお土産物屋さんの姿も。店内はかなり賑わっていました
Z fc、NIKKOR Z
28mm、F7.1、1/200秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:風景
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F2.8、1/3200秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:ソンバー
水位が足らず、観光船に乗れず……
私が小野川沿いに到着したときには運航していた舟ですが、その後まもなくして、川の水位低下で運航が中止に。早く乗っておけばよかったです。
小野川の舟めぐり。利根川近くまで行って戻ってくる30分ほどのコースです
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:風景
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F7.1、1/200秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:トイ
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F9、1/320秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:ソンバー
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F2.8、1/4000秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
途中カフェでかき氷をいただきました。古い町並みにはかき氷が合います。予想を上回る大きさでしたが、美味しく完食しました
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/80秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:ビビッド
がっつり近づいて。本レンズは結構寄れます
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/200秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:
三菱館。三菱銀行佐原支店旧本館として長く使われていた建造物で、千葉県の有形文化財に指定されていて、室内を見ることもできます。こうした歴史的に価値の高い建物が佐原には点在しています
Z fc、NIKKOR Z
28mm f/2.8、F9、1/320秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AUTO、ピクチャーコントロール:風景
伊能忠敬を知り、名物の山車も見学
佐原は伊能忠敬が長く暮らした場所ということで、銅像や記念館があり、旧宅もきれいに保存されています。そして、佐原は山車を引く大祭も有名。毎年、夏と秋に行われます。大人形が据えられた山車は迫力満点です。
伊能忠敬の旧宅。ここは無料開放されています。焦点距離42mm 相当(35mm判換算)の画角のため、狭い場所を広く撮るには引きが必要です
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F11、1/500秒、ISO800、-0.3EV、ホワイトバランス:AUTO、ピクチャーコントロール:トイ
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F7.1、1/200秒、ISO800、+0.3EV、ホワイトバランス:AUTO、ピクチャーコントロール:トイ
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F11、1/500秒、ISO800、+0.3EV、ホワイトバランス:AUTO、ピクチャーコントロール:トイ
佐原の山車は「水郷佐原山車会館」で見学できます。山車全体で高さが9m近くにもなるそうです。ここは引くことができなかったので、部分的に切り取りました
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/250秒、ISO1600、-0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
展示されていた山車の「金時山姥」。すごい形相です……
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/125秒、ISO1600、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
山車の有名な佐原の大祭とお囃子は重要無形民俗文化財として国の指定を受け、ユネスコの無形文化遺産にも登録されているようです
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/80秒、ISO1600、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F2.8、1/640秒、ISO1600、-0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
唐突ですが、お昼はカツ丼をいただきました。佐原は鰻も有名です
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/160秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
「Z fc」でクリエイティブに撮る
「Z fc」はそのフォルムや操作性からも遊び心が伝わってきますが、通常の仕上がり設定「ピクチャーコントロール」に加えて、20種類の「クリエイティブピクチャーコントロール」を搭載しているところも遊び心をかき立ててくれます。「Z fc」で写真を楽しむなら、ぜひこの機能も活用してみたいです。
特に、今回のような同じ雰囲気の被写体を撮る場合、その被写体自体が魅力的でも、描写がマンネリ化しやすいです。色みやトーンを変えることで、バリエーションを増やすことができます。
「クリエイティブピクチャーコントロール」は「ピクチャーコントロール」内から設定できます。効果を電子ビューファインダーやモニターで確認しながら撮影に臨めます
個々の中身を細かく調整できるのも魅力です。適用量なども調整できます
「トイ」で撮影
古い町並みにはレトロ感を演出できる「トイ」がよくなじみます
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F6.3、1/160秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:AUTO、ピクチャーコントロール:トイ
「ソンバー」で撮影
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F2.8、1/1000秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:ソンバー
「ポップ」で撮影
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F8、1/250秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:ポップ
「ドラマ」で撮影
樋橋、通称「ジャージャー橋」では、川の流れを調整するため30分おきに水が放流されます
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F6.3、1/160秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:AUTO、ピクチャーコントロール:ドラマ
「デニム」で撮影
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F5.6、1/125秒、ISO800、-0.3EV、ホワイトバランス:自然光AUTO、ピクチャーコントロール:デニム
「チャコール」で撮影
Z fc、NIKKOR Z 28mm f/2.8、F2.8、1/800秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:チャコール
「カーボン」で撮影
建築物にはモノクロ描写もよく合います。「ピクチャーコントロール」は単色のレパートリーも豊富です
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/125秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:カーボン
「NIKKOR Z 28mm f/2.8」1本で切り取る
今回の旅は「NIKKOR Z 28mm f/2.8」1本で、直感的にテンポよく撮影していきました。先に述べたように、本レンズは「Z fc」に装着した場合、35mm判換算で焦点距離42mm相当の画角となります。
標準50mmに近い画角なので、自然な見え方で切り取れるだけでなく、引けるシーンであれば広角っぽく撮れます。また、最短撮影距離が短くかなり被写体に寄れるため、背景を広く入れ込みながらダイナミックな接写を楽しめるのもポイント。寄り引きの工夫次第でさまざまな表現が楽しめます。
ちなみに、本レンズは、AF時に特定の機能を割り当てられる「コントロールリング」を搭載しています(※フォーカスリングが「コントロールリング」として機能するタイプです)。私はこのリングに「絞り」を設定しました。こうすることで、リングを回すことで絞り値を変更できるようになります。これがとても便利で重宝しました。
レンズの「コントロールリング」へのカスタム登録画面。「Z fc」では「絞り」「フォーカス(M/A)」「露出補正」を設定できます
42mm相当だとむだに広く撮ってしまうようなことがなく、広い風景も構図が決めやすいです
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F9、1/320秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:自然光AUTO、ピクチャーコントロール:風景
壁や道路などは、斜めからラインを意識しながら撮ることで、広角っぽく切り取れます
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F7.1、1/200秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:ドリーム
被写体に正対する構図は標準域が扱いやすいです
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F6.3、1/160秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:トイ
最短撮影距離まで近づいて撮影。ほどよい遠近感でダイナミックな描写に。開放F2.8で撮っていますがシャープな描写です
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/1600秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
花も結構大きく切り取れます。オールマイティーにさまざまな被写体に対応できるレンズです
Z fc、NIKKOR Z 28mm
f/2.8、F2.8、1/1250秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャーコントロール:スタンダード
旅のまとめ
今回は千葉県の佐原に行ってきましたが、いかがだったでしょうか?
舟に乗れなかったのは残念でしたが、結構いろいろな写真を撮影できました。佐原は小野川沿いの古い街並みが魅力ですが、町中もレトロな雰囲気でスナップしていて楽しかったです。周囲には関東屈指のパワースポット香取神社があったり、季節の花を楽しめる水郷あやめパークなどもあるので、足を伸ばしてみるのもいいでしょう。レンタサイクルもあります。
「Z fc」と「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」の組み合わせは、古い街並みを散策するのにピッタリでした。ニコンには、デザイン性にすぐれたミラーレスとしてフルサイズ機の「Z f」もありますが、やはりセンサーサイズが大きい分、重量もサイズ感も「Z fc」とは比べものになりません。
しかし、「Z f」はAFや連写性能が充実しています。そういった意味では、「Z f」と「Z fc」の2台を所有して、シーンに応じて使い分けるのもアリだなと思いました。「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」は、「Z f」では広角レンズ、「Z fc」では標準域のレンズに変わるので、楽しみ方も2倍です。
では、次回の旅でお会いしましょう!
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